現在私は病院で働いています。働く環境が安全・安心な環境でなければ、継続的に質の高い医療サービスの提供が困難であると感じており、2015年サンフランシスコで開催された米国従業員保健協会(AOHP)に参加し、医療従事者のおかれる職場環境に興味を深めました。今回その環境構築の取り組みを学ぶために、2016年1月9、10日に大阪において、日本感染管理支援協会主催 株式会社トーカイ共催の『医療機関における従業員保健セミナー』に参加しました。今回のセミナーは、AOHP学会長のMary Bliss氏と、前会長のDee Tyler氏による2日間の特別講演です。
我が国では医療施設における安全と健康に影響を及ぼす要因分析、また予防活動に取り組む組織として医療安全室・感染管理室等が設置されていますが、本セミナーでは欧米の取り組みを紹介されました。
欧米の医療施設では、医療従事者の健康問題に関する全ての出来事を予防し対応する組織として従業員保健部があり、患者と従業員の安全(健康)管理を区別して考え、それぞれの対応する独立した部門として構築されていました。この従業員保健部の位置づけ・その使命にはとても共感しました。
医療従事者の安全と健康に影響を及ぼす要因(ハザード:危険)はいくつもあります※。
・化学的ハザード:抗がん剤、グルタールアルデヒド消毒薬、エチレンオキサイド、ラテックス、レーザーの煙など。これらの吸引、経口摂取、皮膚や目からの吸収、注入による曝露
・生物学的ハザード:結核菌、ウイルス、細菌、空気の質(カビ、真菌)、針刺しや鋭利物によるケガ
・人工学的ハザード:繰り返し手の同作業、作業しずらい姿勢、過剰な力、騒音や照明
・心理的ハザード:過剰な労働時間や残業、職場でのいじめ、緊急事態ストレス
医療の現場には健康や安全に影響を及ぼす多くの要因があることは認識していましたが、セミナーを聴講して改めてハザードの多さと、従業員の職場環境安全確保の重要性を再認識できました。
私は感染管理担当者として、院内の感染予防活動に携わっています。その中で従業員の職業感染予防活動も担い、血液体液曝露や流行性ウイルス性疾患による曝露の対応をし、職業感染“ゼロ”を目指しておりますが、なかなかゼロにはならず、予防活動のために業務時間を確保することの重要性を日々痛感していました。
一人でも多くのスタッフが働く環境に対する意識を高め、全ての従業員が現在働いている職場において、安全で安心して働けると感じ日々の業務が遂行できるよう、また、職場環境が大切であることに気づいて頂ける活動に取組んでいきたいと感じました。
今回、このような貴重な話を聞くことができて、大変うれしく思います。
長時間を費やしてお越しくださったMary Bliss氏、Dee Tyler氏に感謝申し上げると共に、この企画をしてくださった土井先生、株式会社トーカイの皆さま、そしていつも分かりやすく、心地よい通訳をしてくださるエミさん、Wooさんに感謝いたします。ありがとうございました。 |