JICSA 特定非営利活動法人 日本感染管理支援協会 英国感染管理研修ツアー報告 l 2014-10-13
   
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 2014年10月13日~15日 英国感染管理研修ツアー報告  

脳神経センター・大田記念病院
理事長 大田泰正先生

Key Word:病院経営者として参加、病院感染管理の重要性、変わる常識、環境の変化、エボラ対策

英国感染管理研修に参加して

院内感染対策チームの担当ドクターに勧められ、この研修ツアーに参加しました。1年前から予定していたため、スケジュール調整は万全だったのですが、出発前に子供の風邪がうつり、見学前に発症してしまい、体力的に大変な研修になりました。往路の飛行機内で症状が悪化し、CAさんに心配していただきながら、ロンドンのヒースロー空港に到着しました。10月とはいえ、ロンドンの気温は低く、コートとマフラーが必要です。エクスプレスは使わず各駅停車で到着、小雨の降る中ホテルにチェックインしました。 研修前日に到着したので、夜は参加者で集まり食事兼事前ミーティングのつもりだったのですが、ピザとビールで盛り上がりました。隣席の人とは名刺交換したり、自己紹介したりで、よくある研修旅行の滑り出しです。土井英史さんの雰囲気作りも慣れたもので、少し緊張気味の参加者も和んだ印象でした。

いよいよ研修初日となりました。3日間のスケジュールが充実した印象はありましたが、結構ハードです。より良い研修にしたいという意思がひしひしと伝わる内容でした。まず参加者の専門性やレベルを問わない、しかしながら誰が聞いても勉強になる講師を招聘しています。どうやら内容構成としては、毎年のようにUp to dateを繰り返しているらしく、複数回参加されている方々もいらっしゃいました。 感染症の総論、細菌学や薬理学に近いような講義、最近のトピックス、そして見学と、とにかく盛りだくさんで、参加者の真面目さと、コーディネーター側の熱心さとで、私自身も真剣に勉強させていただきました。秀逸だったのは、通訳さんのレベルが高いことで、私自身の英語力は低いのですが、それにしても感心する内容でした。通常二人で交互に通訳をされるのですが、ペアを組んで長いそうで、息もぴったり訳された日本語が絶妙でした。

現地コーディネーターのMis. Susanの多大な尽力も特筆すべきものがあり、彼女の存在がこの研修のカギを握っている様子でした。私はおおむね最前列に座って聴講していたのですが、「彼女に呼ばれたら断れない」という雰囲気を感じました。この研修の最大の特徴は、コストパフォーマンスが非常に高いことですが、演者への謝礼も相当安く抑えているようで、彼女の人脈のすごさを垣間見ることができました。 もっとも盛り上がったレクチャーはエボラ出血熱患者への対応であり、経験に基づいた内容を丁寧に教えていただきました。第一種感染症指定医療機関からの参加者もあり、多数の質問が飛び交いました。私も圏域メディカルコントロール協議会に関与しているので、大変参考になる内容でした。帰国後にさっそくエボラ疑いの搬送が報道されるのを見て、講義でいただいたスライドを復習しました。

わずか3日間の研修ですが、メインコーディネーターの土井さんの配慮が随所に行き届いており、初めての海外研修でも問題無いと感じました。とにかく研修のコストパフォーマンスが高く、私は病院経営者として参加しましたが、大変勉強になる内容でした。おそらく何年もの研修を積み重ねる中で、最大効果が追求された結果だと思います。感染管理に携わるあらゆる立場の方々にお勧めできる内容です。また研修の講義や見学から得られる情報も有益ですが、参加者同士の情報交換も面白く聞かせていただきました。