JICSA 特定非営利活動法人 日本感染管理支援協会 英国感染管理研修ツアー報告 l 2011-10-25
   
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 2011年10月25日~27日 米国感染管理研修ツアー報告  

徳島県立中央病院
感染管理認定看護師 長町律子

「他の病院ってどうしているの?」ちょっと覗き見していいアイデアがあれば取り入れたい!と感染対策を担当している方なら誰しも思っていることではないでしょうか。私は,自施設の感染管理を担当しており,感染対策の問題に対して日々試行錯誤をしながら奮闘しています。そのなかで,感染予防策を職員全員が重要と感じ,実践するためにはどのように活動すればよいか?という壁にぶつかっておりました。

土井先生の講演に,機会があれば参加をしていますが,そのお話の中で毎年,米国ホノルルで研修があることを知りました。そこで,感染予防のガイドラインを多く生み出している米国においては,臨床現場でどのように感染対策を推進しているのか是非この目で確かめたいと思ったこと,感染対策のさまざまな創意工夫やアイデアを覗き見して,自施設の改善や自分自身の糧にしたいという動機からこの研修に参加しました。

   
  今回の研修病院であるクイーンズ・メディカルセンターは,533床の総合病院です。なんと5000人を超える従業員がいるそうです。
1859年にエマ女王とキングカメハメハⅣ世によって設立された歴史のある病院で,非常にきれいでした。
全米で250病院だけしか認定されていない優良病院だということです。
病院の敷地内は,大きな木や日本では見たことがない珍しい植物が,そこかしこに植えられ,行き届いた管理がされています。とても癒しになると思いました。
   
 

 

次に,私達が経験した米国感染管理研修のスケジュールについてご紹介します。
日時:2011年10月25日~27日
場所:クイーンズメディカルセンター会議室

10/25(火) 10/26(水) 10/27(木)
8:30-8:45コンチネンタルブレックファースト8:30-9:00コンチネンタルブレックファースト
8:45-9:30導入9:00-11:00CLABSI予防
9:30-10:45職員健康管理11:00-12:15パンデミック計画
10:45-11:00休憩12:15-12:45昼食
11:00-12:30施設管理10:00集合12:45-14:00抗生物質の合理的アプローチ
12:15-12:45昼食11:15-12:00昼食14:00-14:15休憩
12:45-13:30CUSP12:00-15:30病院ツアー14:15-15:30SSI予防
13:30-14:45UTI予防15:30-16:30質疑応答15:30-16:30質疑応答
終了証授与
14:45-15:00休憩
15:00-16:15VAP予防
   
コンチネンタルブレックファーストを頂いた後,講義が始まります。 スペシャリストの講師から講義を受けます。もちろん,英語です。ご心配なく,研修には通訳が2名同行していますので,英語のわからない方でも問題ありません。 講義中でも,どんどん質問でき,講師もそれに対して丁寧に答えてくださいました。 講義内容は,認定看護師研修で学んだ内容とさほど大きな違いはありませんでしたが,新しい情報として,「CUSP(カスプ)」という問題解決手法を感染管理に取り入れ,感染率の低減に成果を出していることを知りました。  
   
   
 
CUSPは,Comprehensive Unit-based Ssfety Program(包括的ユニット別安全プログラム)のことで,CUSPとはについて講義がありましたが,詳しくは土井先生にお譲りするとして・・・印象としては,TQM(QC)活動と似ているなあと思いました。 感染管理は,担当者が行うものであるという傾向が日本には少なからずあると思います。しかし,米国の臨床では,問題をよく認識している現場が感染対策について責任を持っており,感染を撲滅するためにチームを作って継続活動をしています。そのチームには,医師が積極的に関与していることを知りました。
   
  講義では,実際に使用している医療材料を紹介してくれました。 上の写真は,尿道留置カテーテルキットです。一見日本で使用しているものと変わりがありませんが,陰部清拭クロスや手指消毒剤,尿路カテーテル固定器具がセットされています。また,尿道留置カテーテルの適応について記載された添付文書も入っていました。 NICUの患児用に中心静脈カテーテルドレッシング交換キットを考案し,商品化がされていました。写真は,ドレッシングを貼る為の滅菌サイドですが,裏面は,ドレッシングをはがすための清潔サイドになっています。 こんなアイデアいただき!ですよね。
   
 
施設見学は,写真撮影や見学場所の規制が厳しいことから,感染対策の実際については,一部しか確認できなかったことが残念でした。
   
手指消毒剤ですが,病室前だけでなく,各フロアのエレベーター前にも設置がされており,管理は清掃担当者が行なっているとのことでした。 日本でも少しずつ商品化されてきているかと思いますが,泡タイプが導入されていました。  
   
   
   
  日本では,いくつもゴミ箱があって廃棄物の分別が大変ですよね。米国では非常にシンプルです。 バイオハザードマークの付いたゴミ箱と付いてないゴミ箱の2種類だけです。 部屋の壁には,針入れBOXが備え付けてありました。サージカルマスクや手袋,エプロンといったPPEも同様に備え付けてあり,必要時すぐに使用ができるようにしてあります。 また,医療材料を廊下から室内に補充できるように,埋め込み式の戸棚がありましたよ。 写真はとれませんでしたが,中央材料室,OP室見学もしました。
   
   
今回の研修に参加された方々は,看護師だけでなく理学療法士,企業関係者,病院事務部門の方も参加されていました。それぞれの方と情報交換ができ,とてもいい刺激になりました。 機会を作って,次は英国に行きたいなあと考えています。 ホント,癖になりそうな楽しさなのです! 私が書いたこの記事を見て,参加したいと思っていただける方が増えれば幸いです。 最後に,土井先生,岡先生,通訳の禹さん,エミコさん,参加者の皆さん大変お世話になりました。